Enterprise Grid で挑む三菱重工の DED(Digital Experience Design)

プロジェクト別ワークスペースやアプリ連携でデジタルエクスペリエンスを向上

三菱重工業株式会社は、パワー、航空・防衛・宇宙、インダストリー & 社会基盤という 3 つの事業ドメインから成り立っています。このなかで産業材や公共財を扱うインダストリー & 社会基盤ドメインは、全社売上の半分近くを占める領域です。このドメインは製品別の事業会社によって成り立っていますが、各事業会社ではデジタルに取り組みたいけれど十分ではないという課題がありました。

そこで、各事業のデジタル化を支援すべく発足したのが、事業戦略部デジタライゼーション推進グループです。2020 年 4 月からは CEO 直下組織の成長推進室として全社のデジタル化を推進していくこのチームを引っ張るのは川口賢太郎さん。そんな川口さんに、同社での Slack Enterprise Grid 活用方法を伺いました。

アフターサービスのカスタマーエクスペリエンスに課題

三菱重工が提供する製品には、プロダクトライフが20~30 年にわたるものがあり、製品販売時だけでなく販売後のアフターサービス段階も非常に大切です。しかし、サービスの現場はまだまだデジタル化の途上。問い合わせがあっても担当者から担当者へのバケツリレーで処理していたり、パーツやサービスマンの依頼を受けても納期や作業日を即答できなかったりという課題がありました。

この状況に対して「デジタルを活用して解決や改善できることがいっぱいある」と考えた川口さんは、デジタルでカスタマーエクスペリエンスをより良くしていこうという「デジタルエクスペリエンスデザイン」に乗り出しました。その際に重視したのは、「技術的にものすごいものを作る」アプローチではなく、「顧客の課題を全体的に解決する」というアプローチでした。

そのために川口さんのチームでは、顧客接点となるカスタマーポータルを立ち上げ、顧客データを管理する CRM システム等と連携させ、それらの背後でユーザー認証基盤等を整備。そのなかで AWS、Looker、kintone などさまざまなツールを活用していますが、開発運用者チームで使い始めたのが Slack の Enterprise Grid でした。

プロジェクト単位のワークスペースを社内外で活用

試験的に導入した Slack ですが、川口さんのチームが選んだのはスタンダードプランではなくいきなり Enterprise Grid。「情報システム部門と連携して導入したのですが、当社の基準に合うのが Enterprise Grid。即決でした」と川口さんは振り返ります。

Enterprise Grid とは、1 つのワークスペースに限らず、組織内で相互につながった複数のワークスペースをメンバーが活用できるというもの。チーム別またはプロジェクト別にそれぞれ専用のワークスペースを活用しつつ、全体を通じて使える検索やダイレクトメッセージ、ディレクトリにより、チーム・プロジェクトをまたいだコミュニケーションが可能になります。

川口さんが考えたワークスペース構成は基本的にプロジェクト単位。プロジェクトは事業部門ごとに行うため、実質事業部門ごとにワークスペースがあるイメージです。これらのワークスペースを使うユーザーには大きく分けて 3 種類あります。

1 つ目が川口さんたち「社内・自部門 システム開発運用者」。このユーザーはすべてのワークスペースを利用できます。

2 つ目は「社内・他部門 システム利用者」。各事業部門のメンバーがこれに当たり、自分のプロジェクトのワークスペースに参加することができます。ここではシステム開発上のやりとりを、ユーザー部門である事業部門に対してすべてオープンにしています。

3 つ目が「社外・パートナー システム開発運用者」。社外の開発パートナーは基本的にシングルあるいはマルチチャンネルゲストとしてワークスペース内の必要なチャンネルに参加します。

さまざまなツールと連携できるからこそ Slack Enterprise Grid

またワークスペースごとにさまざまなツールとの連携も進めています。すでに GitHub、Backlog、Qiita:Team、Zoom、BOX などと連携しているほか、kintone などとも連携予定です。

最近では、Looker と連携を開始。もともと異なる BI を使っていたそうですが、Looker と Slack のインテグレーションが良かったことが移行の決め手だったそうです。これによって、「 Looker で作ったレポートを Slack のチャンネルで事業部門と共有しやすくなるだろうと期待している」そうです。

これらの連携を進めていくうちに、チームのコミュニケーションにも変化が生まれました。それまではメールが中心だったのが、Slack がすべてのコミュニケーションハブとして機能するようになったのです。また、Slack のビデオ通話機能もよく使われており、「今や多くのテレカン(テレカンファレンス)が Slack で行われています」と川口さんは話します。

実は以前、川口さんは Teams や Salesforce の Chatter を使っていたそうです。「でもまったく利用しなくなりました。機能の良し悪しを言っているのではなくて、例えば Teams だと社のポリシー的に社外の開発パートナーさんが参加できなかったんです。ほかにも、各システムとのインテグレーションを考えると、やっぱり Slack が一番使いやすいという結論になりました」。

組織マネジメントにも活用

今や Slack は川口さんの毎日に欠かせない存在です。2020 年 1 月の川口さんの Slack アクティブ日数はなんと 30 日。投稿メッセージ数は 601 にも上ります。

チームの利用状況を見ていて、川口さんは「Slack のメッセージ数と組織に与えるポジティブインパクトは相関しているのでは」と気づいたそうです。また、前月からメッセージ数が変化したメンバーには業務において何かしらの変化があったことが推測できるとも言います。これらの気づきから、川口さんは「組織マネジメントの観点からも、Slack の利用率のモニタリングは有効ではないか」と考えているそうです。

また、 川口さんは「 #けんちゃんねる」というチャンネルで、メンバーに対して情報や意見を積極的に発信しています。マネージャーの考えを積極的かつカジュアルに共有できるようになったことで、メンバーに「次はこういう方向に行くのかな」というイメージを持ってもらうことができ、全員が目指す方向を自然と揃えることができているそうです。「今は飲み会などの機会も減り、『こんなことをやりたい』というのを全員に対して一度に共有するのはなかなか難しいものですが、チャンネルなら各自のタイミングで見ることができる。Slack はそのコミュニケーションに非常に役立つツールだと思っています」と川口さんは話します。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で 2020 年 2 月に全社員に対して在宅勤務が推奨された際は、方針が通知されてから対応まで 2~3 時間で終わったといいます。すでに開発基盤がクラウドネイティブであったことも一因ですが、Slack というコミュニケーションハブを使っていることで非常にすばやく動くことができたと川口さんは話します。

今後は Slack のユーザー管理を仕組み化していくことを考えている川口さん。システムユーザーマネジメントシステムを作り、ユーザーとその権限をデータベース化し、認証基盤やSlackのユーザー管理機能と同期させることで、「いなくなったユーザーの権限が残っている」などの問題を回避することを目指しています。

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