東映アニメーションが Slack を公式ツール化するまで

Enterprise Grid を導入し、知らぬ間に増えたワークスペースを整理

『ONE PIECE』や『プリキュア』シリーズなど人気アニメでお馴染みの東映アニメーション株式会社。アニメの製作・販売から版権事業、さらにキャラクター商品開発・販売などを幅広く手掛ける同社の経営理念は「全員が活発にコラボレーションし、想像力と工夫をもって、新たな作品やビジネスを創造・発信していく企業」となることです。この理念を実現すべく、2020 年 1 月に導入されたのが Slack Enterprise Grid でした。

社内のコミュニケーションツールの検討を始めてからこの Enterprise Grid 導入までの道のりはおよそ 1 年。そのプロセスについて、導入をリードした情報システム部の賀東敦さんは率直に「もっと早くやればよかった」と話します。今回はその紆余曲折を振り返りながら、「あのときああすればもっとスムーズだった」と思うポイントを賀東さんに紹介してもらいました。

若手の声をきっかけに手探りで導入

2018 年の 10 月、賀東さんのところに若手からこんな声が届きました。

「『おつかれさまです』がメールから消えると年間 600 万円の節約になる」

社内メールに限ってメール冒頭に入力する定型あいさつ文を省略することで、送信者の入力時間と受信者の読む時間の削減につながり、それを金額で算出すると全社で年間約 600 万円の節約になるという意見でした。

「すごくいいことを言っている」と思った賀東さんでしたが、同時に「社内的にはかなり進んだ意見のため、導入するにはその理由となる課題感をもっと明確にする必要がある」とも感じ、すぐに実現に向けて動くことはしなかったそうです。

同じ頃、社内ではチャットツール導入の要望も若手からぽつぽつと聞かれるようになっていました。そこで 2019 年 3 月、賀東さんは導入前調査に着手。そのプロセスとしては、従来同社で行われていたプロジェクトのテンプレート通りに進めることを考えていました。

まずアンケートで現状を把握し、その後ツール導入の目的と指標の策定。さらに導入までのスケジュールを詳細に決定するほか、システムの機能、サポート体制、セキュリティ強度など東映アニメーション側の必要要件の洗い出し。

その後は自社のルール決めのフェーズです。実際にどのツールを導入するのか比較検討を行い、運用を設計し、利用方法・手順やルールを策定し、導入後の展開をイメージ・計画し、その後試験利用する対象者を選定する…とここまで「やるべきこと」を挙げた賀東さんはこんなことに気づきます。「従来のプロジェクトスタイルで検討していては時間がかかりすぎる」。

実は、導入前調査の段階で色々なメンバーにアンケートやヒアリングを行った時点で、社内には多種多様な意見や自由な見解が存在していることに気づき、目的設定にまでなかなかたどり着かないことがわかったのです。

検討を進めるなかでもメンバーの Slack ニーズは拡大

そうこうしているうちに、新たな事実が判明します。2019 年 11 月時点で、すでに東映アニメーションでは 949 名の Slack ユーザーが、 1 つの有料ワークスペースと 72 もの無料ワークスペースを利用し、そのなかで 70 のアプリと連携していたのです。

慎重に展開しようとするあまり、検討に何か月もの時間を費やしていたなかで、社内の Slack ニーズはどんどん拡大していたことに気づいた賀東さん。すでにメンバーが現場で活用しているものをやめるわけにはいきません。そこで、「ルールと把握できる仕組みを用意して許容するしかない」という方向に転換します。ここで賀東さんが用意したのは次のような最低限の暫定運用ルールでした。

  • コミュニケーションツールを使うなら Slack を
  • オーナーか管理者に必ず情報システムメンバーを入れる
  • 定められたルールの通り設定する

組織にとってベストなのは Enterprise Grid 一択

有料・無料を合わせて、すでに 73 ものワークスペースが存在していた東映アニメーション。しかし、組織全体で Enterprise Grid を導入していなかったことで、さまざまな問題が起こりつつありました。

まず、無料プラン利用時には、メッセージの閲覧と検索が直近メッセージ 10,000 件に限定されているため、過去のやり取りのログが 10,001 件目からアーカイブされ、検索対象から外れてしまうという状態に。結果、不便を感じたメンバーが Slack を離れようとしていたのです。

さらに、Enterprise Grid 以外の有料プランでは、会社全体に存在する複数のワークスペースが相互に繋がりません。この場合、アカウント利用数がワークスペースごとにカウントされるため、1 人のユーザーが複数のワークスペースを使っていると、ユーザーが重複してカウントされてしまうという問題がありました。

このような状況のなか、検討チームは改めて現状把握のためアンケートを実施。すると「一番よく使うコミュニケーション手段・ツール」として 51% のメンバーが、また「一番利用しやすいコミュニケーション」として 75% のメンバーが「Slack などのチャット」を挙げたのです。

暫定ルールの運用が動いていたこともあり、Slack がもはや社内のコミュニケーションに欠かせないと考えた賀東さんは、会社に本格導入を提案。こうしてついに Slack が公式コミュニケーションとなり、2020 年 1 月に Enterprise Grid が導入されました。

社内展開は初動の速さと暫定ルールがポイント

このような道のりを振り返った賀東さんが思うのは、「初動がもう少し速ければればよかった」ということです。従来のプロジェクトスタイルで調査やゴール設定をしている間にメンバーがそれぞれ Slack を使い始めたわけですが、「そもそもメンバーから『おつかれさまです』をやめる提案が出たときに、『まだその時期じゃない』と置いておくのではなく、社内のコミュニケーションの実態把握にとりあえず着手していれば良かった」と言います。プロジェクト運営のテンプレートにはまらず、スピーディな状況把握をしていれば、全社としてもう少し早く Enterprise Grid が導入できたのではないかと考えています。

もう 1 つ賀東さんが思う大切なポイントは、現状把握後にすぐに暫定運用ルールを策定すること。すでに IT リテラシーの高い人の間で使われ始めた Slack ですが、そうするとリテラシーの低い人との間で Slack 利用度の差がどんどん広がってしまいます。そんなリテラシーの低いメンバーが、すでに使われている Slack に慣れるまでは大変。当然サポートコストもかかってきます。そうならないよう、差が広がらないうちに暫定運用ルールを作ってみんなが使えるようにしておいたほうがよいと賀東さんは考えています。

コミュニケーションツールからプラットフォームへ

こうして東映アニメーションの公式コミュニケーションツールとなった Slack ですが、「効果的・効率的に仕事を進められるようになり、利便性も飛躍的に高まった」と賀東さんは評価します。ただ、全社展開はまだまだ始まったばかり。今後は Box などとのアプリ連携や、トレーニング、ユーザー管理など、やりたいことが山積みです。「ゆくゆくは、コミュニケーションツールに留まらず、業務全体のプラットフォームとして使っていければと思います」と賀東さんは今後の活用に期待しています。

Slack is the collaboration hub, where the right people are always in the loop and key information is always at their fingertips. Teamwork in Slack happens in channels — searchable conversations that keep work organized and teams better connected.